スキャンダラスな男女関係が描かれる喜歌劇「こうもり」。その作曲者であるヨハン・シュトラウスⅡ世も、まさにスキャンダルの渦中の人!恋愛の旋律を奏でる彼の人生を、ちょっぴり覗いてみましょう。
さて、ヨハンの女性遍歴は、彼の音楽と同じくらい華やか。まず最初に登場するのは、ロシア貴族の娘オルガ・スミルニツキー。当時30歳のヨハンが婚約しましたが、彼女の両親が猛反対して結婚は幻に。ちなみに、「オルガ」という名前、どこかで聞いたことありませんか?そう、「こうもり」の2幕でアデーレが扮して登場するあのオルガ!ヨハンさん、作品に未練を込めましたか?
次に、最初の妻となるのが、11歳年上のヘンリエッテ・ハルベツキー。銀行家であるトデスコ男爵の愛人だった彼女に、舞踏会で一目惚れしたとか。男爵も寛大な人で、「どうぞお幸せに」と結婚を許してくれたそうです。他人の愛人を略奪してゴールインとは、なんとも大胆な作曲家ですね!
献身的なヘンリエッテとの結婚生活に支えられて作曲家として成功したヨハンでしたが、愛の熱はいつか冷めるもの。ヘンリエッテが歳を重ねると、ヨハンは浮気三昧。そんな彼女が亡くなると、なんと半月後には27歳下の歌手アンゲリカ・ディットリヒと燃えるような恋に落ちました。なんてひどい!……と思いきや、アンゲリカは「老いぼれ」とヨハンを呼び捨て、アン・デア・ウィーン劇場の若い監督シュタイナーのもとへ。この劇場は「こうもり」が初演された場所というのも、なんだか因縁を感じますね。
その後、アンゲリカが後悔して戻ろうとした頃には、ヨハンの視線はすでに別の女性へ。その相手が、最後の妻となるアデーレ・シュトラウスです。彼女、なんとヨハンの35歳下!さらに驚きなのは、アデーレが少女だった頃からヨハンは好意を寄せていたらしいのです。「35歳下って…少女時代から狙ってたって、ヨハンさん、それどうなんです?」とツッコミたくなる話です。
再婚には宗教上の障壁がありましたが、ヨハンはプロテスタントのドイツで籍を入れるという手段を選択。その後もウィーンで暮らし、アデーレとの夫婦生活は幸福だったとか。最後は彼女に看取られ、穏やかに人生の幕を下ろしました。
ところで、アデーレという名は「こうもり」にも登場しますね。彼女は、誰も得しないドタバタ劇の中でたった1人だけパトロンを見つけるというラッキーガールなんです!もしかして、ヨハンは相当アデーレのことがお気に入りだったのではないかと思い、考察してみました。「こうもり」を作曲した1874年、ヨハンはまだヘンリエッテと結婚していましたが、浮気症の真っ最中。そしてその頃、アデーレは14歳で、彼の住まいの近くに住んでいたという説も。となると、「こうもり」のアデーレというキャラクターは、すでに彼の心にいた実在のアデーレがモデルだったのかも?……深読みしすぎかもしれませんが、ヨハンならやりかねませんね!
「こうもり」のスキャンダラスな男女関係と、ヨハン・シュトラウスⅡ世の人生を重ねて楽しむのも一興です。彼の恋愛遍歴に思いを馳せながら、舞台を存分にご堪能ください!