#6 出張版! Va わいない(2)

 どうして私は名古屋にいるのでしょう。出発地は北海道、目的地は長野県。それなのに、私は名古屋にいました。「無茶な計画は立てないほうがいい。たとえ君が完璧な行程表を組めたとしても」

私は旅行サークルの北海道で行われた夏合宿から長野県は栂池高原での別の合宿に移動することになっていました。北海道から長野への移動はとても1日では不可能のように思えますが、新千歳空港および札幌丘珠空港から松本空港までFDAが直行便を運行しています。まさに自分のような存在に最適な便ではないですか。私は、北海道に旅立つ前に、丘珠発松本行の航空券の予約を済ませ、準備万端でした。今思えば、この時の私は呪われていたのではないでしょうか。行きの行程でも地獄を見た私ですが、どうやら今回もまともな行程を進めることは出来なかったようです……。

 時は2018年8月22日。私達旅行サークル一行は洞爺観光ホテルに宿泊していました。本当に、野宿とは大違いの天国のような人権ある宿泊でした。朝7時半、この後も洞爺湖を観光するサークル員と別れ、洞爺駅へ向かいました。それが間違いでした。

 今思えば、なぜ宿にいる際にもっと情報収集をしなかったのだろう。なぜtwitterを見ていたのに、天気についても調べていたのに、運行情報だけは見ていなかったのだろう……こうして、私はまたしても地獄に堕とされてしまいました。

7時45分、洞爺駅に着いた時、ある掲示を目にすることとなります。

スーパー北斗1号 大雨により運休

まさかの掲示に横たわる絶望。わざわざ早い時間の特急を選んだのも、なるべく早く次の目的地に向かうためだったのに。この時点で、洞爺駅での2時間半の待ちぼうけが確定しました。ホテルでもっとゆっくり出来たのに……。

 さて、飛行機に乗れないことがわかった瞬間やるべきことは2つです。

・今予約している飛行機を何とかキャンセルする(可能ならば無手数料で)

・代替の、かつ目的地に最速でたどり着ける飛行機を見つけ、予約する

 1つ目に関しては、10分ほど待ってようやく繋がった電話で、何とか無手数料で払い戻しをしてくれることが判明しました。ただし、条件が新千歳空港のカウンターでの払い戻しになるとのこと。スーパー北斗1号が運行されない時点で、予約している11時25分発の丘珠空港便に間に合わないことが確定している私は、とりあえず新千歳空港に向かうことにしました。しかし、またもや地獄が私を襲います。

 代替の飛行機がない。正確には、「手持ちの残額で乗れる」飛行機がないのです。新千歳から松本まで正規運賃では3万円を優に超えます。野宿旅行をしていた身には3万円の出費は辛すぎます。今すぐに予約はできません。いっそ東京まで戻りバスに乗り継いだほうが安くつくだろうと慌てて検索しますが、それもすぐに上手く行かないことが分かりました。私と同じように慌てて新千歳便を探している人が殺到したのか、東京までのLCCは既に売り切れてしまっていたのです。AIRDOのユース割引も考慮していましたが、オンラインでの予約・支払いは不可能、と不安要素が多すぎるため却下になりました。実際、新千歳空港にたどり着く前にAIRDOは満席になっていました。ANAやJALはそもそも21時前後の便しか安価な料金設定のものがありませんでした。遅過ぎます。

 焦りに焦る私ですが、結局明確な結論が出ないまま2時間以上戸惑いながら、ついに札幌方面へ向かう時間が来てしまいました。大幅に遅延しながらやってきたスーパー北斗5号に乗車。混雑する車両で立つ場所もギリギリの状況で、ネットを何度も見回す中、あるひらめきが降りてきました。しかし、そのひらめきがこの後さらなる地獄を生み出すとはこの時思いつきもしませんでした……。

 新千歳空港は東京(羽田・成田)と札幌を1日に何十本もの飛行機が飛び交う、いわば「ドル箱」路線です。そして、新千歳空港にはもう一つの「ドル箱」路線があります。

そう、名古屋便です。

新千歳空港と中部国際空港(名古屋)を結ぶこの路線も1日20本を誇る大規模路線で、東京便と同じくLCCも就航しています。調べてみると……エアアジア14時35発の便にまだ空席があるではないですか!値段も約16000円と問題なし!自転車も預けることができそうです。ようやく希望が見えたように感じました。

 名古屋にさえ出てしまえば、そこから松本に向かうのは容易です。名古屋からは特急しなので2時間半もかからずに松本に到着できます。新千歳を14時台に出られるなら、松本には遅くとも21時までには辿り着けるでしょう。松本への直行便に乗れそうに無い今、羽田に向かう金も便も無い今、最善の選択だと考え予約を完了させました。これでもう一安心……。

もちろんそんなはずはありませんでした。

 私はLCCの洗礼を受けたのです。

 機内手荷物の預け入れや機内食といったサービスは、基本的にLCCでは有料ですが、追加料金をあらかじめ払って利用する料金プランもあります。PEACH航空でいうハッピーピーチ・プライムピーチなどが当てはまります。エアアジアも同様の設定があり、機内手荷物20kgと機内食が無料となるバリューパック(当時1400円)を選択。この時、手荷物に自転車が含まれると思っていたのですが、

カウンター「自転車は対象外です」

騙されました。1400円が無駄になりました。エアアジアのページを一見すると、受諾手荷物について何らの詳細が書いていないのです。もちろん、「自転車が別途料金必要」という文言も。よくよくサイトを隈なく探して、ようやく「スポーツ用品携行料金」の文字を見つけることができました。15kgで2100円、20kgで2400円でした。あえて強調しておきますが、300円の差です。値段を確認して、15kgのスポーツ用品携行料金2100円をネット上で支払い、改めてカウンターへ向かいます。

カウンター「この自転車は17kgですね。追加料金が1kgあたり1400円かかるため、追加で2800円申し受けます」

17kg。ネットで調べた情報では、持っている自転車は14kgのはずでした。しかし、ネットの情報に怒っても仕方がないので再度カウンターを離れ、ネットでプランの変更を試みようとします。

 追加料金の決済画面が消えていました。先程の15kgのスポーツ用品携行料金支払いによって。

この瞬間、カウンターで2800円を支払うことが確定しました。つまり、本来20kgのスポーツ用品携行料金2400円で済んでいたはずなのに対し、バリユーパックの1400円、15kgのスポーツ用品携行料金2100円、さらに重量超過分の2800円と、合計6300円も支払っていることになります。3900円を虚無に投げ銭してしまったも同然です。

 自転車の重量誤認に関しては自分のミスです。LCCにそもそも安価で自転車を持ち込もうとすることが間違いです。公式WEBサイトが説明不足で係員が無愛想で機械的なのは当然のことなのです。ただ、それでも、それでも、WEBから決済画面が消えてカウンターで超過料金を払うしか無い状況には流石に頭に来ました。

 ついでに言えば、機内食すら出ませんでした。何のアナウンスもなしに。

 疑惑のチェックインをようやく済ませた後、FDAでの返金も完了し、ようやく飛行機に乗る事が出来ました。思えば、松本へ向かうはずだったの私は、なぜ地元の名古屋に戻ろうとしているのでしょう。時間と料金のことを考えた結果今の行程があるとはいえ、とんでもない長距離を移動しています……。

 本当に、この後は行程通り進みました。しれっとエアアジアの出発が無連20分くらい遅れましたが、こんなことは想定の範囲内です。

16時43分。すごく、見覚えのあるターミナルにたどり着きました。中部国際空港です。手荷物受け取り場で待つこと10分。カートに乗せられた状態で自転車も戻ってきました。特に傷もないようでした。

 中部国際空港からは、名古屋鉄道の有料特急ミュースカイに乗って金山で乗り換え、そこからは特急しなので松本まで移動します。晩飯はキオスクのおにぎり弁当298円でした。切り詰めました。

松本着が20時45分。洞爺湖でバスに乗ってからすでに13時間近くが経過していました。ようやく、長野県に入ったのです……。

 それでも、最終目的地の栂池高原まではまだまだ道が残されています。避暑地のような場所に夜遅く高速バスが走っているわけがありません。タクシーすら無さそうな雰囲気です。おそらくあるとは思いますが。幸い、東京から直接車で栂池高原に向かっていたサークルの同期もいた為、白馬大池駅まで迎えに来て貰えることになりました。

 さて、松本から2時間弱。途中信濃大町で乗り継ぎながら旅の終着地、白馬大池駅に到着です。まもなく23時を回ろうとしていました。虫が飛び交う駅舎で車を15分ほど待っていました。……ここで野宿することは絶対にないでしょう。

 ついに送迎がやって来ました。トランクに自転車を押し込み乗車。宿に着いたのは23時30分も過ぎようかという頃でした。長い長い16時間の旅でした。

 こうして、北海道の行き帰りとともに私は地獄を見たわけです。

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