第1回ではこのオーケストラが生まれるきっかけを作った総監督のインタビューを行ったが,彼の次にはこの二人を措いて他にいないであろう。「夏の夜の夢」演奏会において多くの奏者の参加のきっかけは団長 吉川による呼びかけであるし,トラオムのカラーにコンマス 小栗の貢献はとても大きなものであるだろう。
中学,高校時代からともにオーケストラで演奏し,友好を深めてきた彼らから見た,トラオムのこれまでとこれからを総監督の視点から探った。
インタビュアー:米本明
文:水谷有輝
写真:安藤詩音里
米本:吉川が団長で,小栗がコンマスになったきっかけから話していこうと思うんだけど,
小栗:最初は単純に向いてるから2ndで頼まれたんだよね。…コンマス向いてないんだよね。
米本:実はね(笑)。最初は吉川と京都で何かやろうぜって話になったんだよね。
吉川:そう,最初は名古屋でやるつもりはなかった。でも東海高校のオケの仲間とまたオケやろう。で,夏の夜の夢とシューベルトの5番合うよねって。
米本:実は吉川が最初に楽団作ろうって言っててくれて,からの俺がじゃあ夏の夜の夢やろうって言ったんだよね。
吉川:正直よく覚えてないんだよね。
小栗:こっちはよく覚えてるよ。浪人中のセンター二ヶ月前に駿台から降りてきたら,米本明が出待ちしてて「よお小栗!」よお小栗じゃねえ!って。(笑) それで名古屋駅に向かって歩きながら話してたら,「そういえばオケ作るんだよね。夏の夜の夢やるんだけどさ,劇付きでやったら面白くね?やろうぜ小栗!2ndトップよろしくな!」いやでも受験中なんだけどって言ったら「受かれ!」っていうからさ(笑)
米本:出待ちしてたわけじゃなんだけどね(笑)
吉川:2人で夏の夜の夢って話になってから小栗に遭遇するのが早くて,話がどんどん進んでったんだよね。
小栗:まあそこですぐいいよって言ったしね。
米本:あれは激励だったんだよ。合格してほしいからオケやろうって
小栗:後付けだろ!
吉川:(笑)
米本:そういえば中学生オケの時から団長,指揮,コンマスで変わってないし3人の関係の変わってないよね。
小栗:そうだね。小栗はバカで,吉川はなだめているように見せかけて火をつけるバカで,米本は底なしにバカ。3人でバランス取れてるんだけど,2人で同じ方向走り出しちゃうと止まらないんだよね。
3人:(笑)
米本:トラオムの今とこれからについてどう思ってる?
吉川:相変わらずだなって感じ。普通に安心だよね。時間が空いて久しぶりに来てみてもいつも通りやってて,でもニューフェイスも入ってて,全然順調だと思うよ。やってる曲が難しいからおいといて,組織的にはうまく行ってるかな。
小栗:自分が気をつけてるのは,指揮者が学生っていうこのオケの良さを殺さないように指揮者と奏者が同じ目線に立って接することかな。その方がやりやすいよね?
米本:そうだね。奏者から音楽でコミュニケーションをとりに来てくれるのが良い。最近学生オケでも序曲だけ学生指揮ってところもあるけど,そっちの方がうまいなんてことあるじゃん?そういう良さがトラオムだよね。
小栗:プロの指揮者が悪いってことじゃなくてね。バックグラウンドの大きさが全然違って,比べることがそもそもおかしいのかも知れないけれど,毎回の練習が他のオケでいう来団な訳で,しかも三好先生もコンチェルトの時はほぼ毎回来てくださってて,本当に普通の感覚じゃ考えられないことなんだよね。
吉川:来団でいつもと違う,みたいなことがないって良いよね。
小栗:そう,だから本番振ってくれる指揮者が毎回の練習で振ってくれると安心感が違うしやっぱり一体感があるなって。音楽を通してのコミュニケーションがお客さんに聞いてもらえるものだから,それを毎回できるってのは良いことだよね。
米本:そういう強みがあるわけなんだけどさ,今後もっとどうしていきたいとか考えてることはある?
吉川:このオケのポジティブなところを言い訳にしてネガティブなところを見ないようになるのはなって欲しくないなって。自分たちのスタンスがあってそれが将来解決するなら良いんだけど,ポジティブなところにかこつけて解決しよとしなくなる。もちろんそういうこともあるし,あって良いことだと思うんだけど,それが増えてきた時にオケが散らばり始める引金だと僕は思ってる。
米本:頑固になっちゃうとね。
小栗:良いところはたくさんあるんだけど,良いオケだって思いすぎて謙虚さを失うのは怖いなって思うかな。ニューフェイスが増えて,その人たちは第1回を知らないから「良くなった」ことを実感していない分,トラオムの良い部分についていけないなんてこともあるかも知れない。
米本:開いたオケにしたいね。課題というか気をつけていきたいことだね。
吉川:目標にするのは共有であって強要じゃないってことかな。